9月24日10時00から塗装業を営む拒蜥ヒ塗装店の税務調査が始まった。
拒蜥ヒ塗装店は社長と職人さん5人の会社。中堅の富士工務店からのペンキ塗りの下請け
のみ ? を行っている。年商は8000万円ほどです。
(調査官田中)
「社長さん!接待交際費の中にある、この請求書、[メンバーズ静香] 」
「振込みで支払って見えるんですけど、どこにあるんですか?」
(大塚社長)
「それは、その請求書に書いてあるところに間違いないですよ」
(調査官田中)
「熱海市?ですよね、ずいぶん遠くまで行かれるんですね。」
「毎月30万円以上の支払いになってますが、どなたと行かれるんですか?」
(大塚社長)
「それは、取引先の社長とか、職人とか色々ですよ」
(調査官田中)
「明細を見ると、一回について3万円から5万円、これが月に8日〜10日も行って見えますよね」
「熱海までは車で1時間以上かかりますよね」
「飲酒運転ですか?」
(大塚社長)
「誰かに送ってもらったり、タクシーを使ってますよ」
「タクシー? 変ですね、タクシー代金の支払いは接待交際費にあがってませんよね朝川先生!」
(朝川税理士)
「たしかに、接待交際費にも旅費にもあがっていませんが・・・」
(大塚社長)
「タクシー代金の支払いは、税理士さんに報告してなかったかな?・・・」
(調査官田中)
「社長さん!ほんとに自分でこの[メンバーズ静香]へ行かれてますか?」
「今晩にでも私が行って、確認してきましょうか?」
「親会社からの経費の付け回し?じゃないですか?」
(大塚社長)
「・・・・・」
大塚社長の風体から見て、失礼ながら[メンバーズ静香]のような高級クラブに通っているとは思えない。また距離、頻度からして怪しすぎる。親会社の交際費の請求書を受け取り、その分親会社へ売上げとして請求しているに違いない。親会社は、交際費が外注費に変わり、税金が安くなる。
9月25日 税務調査2日目
10時00から塗装業を営む拒蜥ヒ塗装店の税務調査の2日目が始まった。
拒蜥ヒ塗装店は社長と職人さん5人の会社。
(調査官田中)
「社長さん! おおたくには5人の職人さんが見えますよね」
(大塚社長)
「はい、5人ともがんばってやってますよ、間違いないですよ」
(調査官田中)
調査官田中は、大塚社長に鎌をかけた。
「ほんとに5人、ちゃんと社長のとこで働いてます?」
「架空の人はいませんか?よくあるんですよね〜実在しない人や、よその会社の職人の名前を借りて・・・なんてね」
(大塚社長)
「失礼なことを言わないで欲しい!」
「なんなら全員、ここに呼ぼうか?」
(調査官田中)
「塗装工さん達ですよね、技術があれば、ほかの会社でも働いたりしてるんじゃないですか?」
(大塚社長)
「あんた失礼なこと言うねー、そんなやつがいれば首だ!」
(調査官田中)
「わかりました、すみませんでした」
(朝川税理士)
「田中さん、回りくどい誘導尋問みたいな言い方はやめてくださいよ」
(大塚社長)
「朝川先生、どういうことですか?」
(朝川税理士)
「社長、5名の職人さんたちは、一人親方さんですよね!」
「一人親方さんは、それぞれが個人事業主でどこで働いても自由なんです。社長のとこだけに拘束されちゃいけないんです。」
「でもって自分で確定申告をして税金払う、これが最低条件です」
「そうしてなければ社長のとこの従業員として給与になるんです」
(大塚社長)
「税務署さん、いま先生がおっしゃったとおりですわ!」
(調査官田中)
「社長さん、先ほど他で働くようなやつはくびだ!っていわれましたよね」
(大塚社長)
「さー、どうだったかな?」
(調査官田中)
「朝川先生、大塚社長は確かに言われましたよね!」
(朝川税理士)
「さー、どうだったかな?」
「あーもうお昼ですねー、田中さんもいっしょに昼飯食べにいきますか?」
(調査官田中)
「いや、結構です、午後1時にまたおじゃまします」
9月25日 税務調査2日目
13時00から塗装業を営む拒蜥ヒ塗装店の税務調査の2日目の午後が始まった。
(朝川税理士)
「言った、言わないなんてのは文書にしてないんでわかりませんね、それにあなたの誘導尋問のような聞き方はどうなんでしょうか?」
「田中さん、要は源泉してないのはだめ!と言いたいんでしょ」
(調査官田中)
「そうですね・・・ただその確認で・・・」
(朝川税理士)
「統括に言っといて下さい、調べてもらえば5人とも確定申告してるはずですよ、大塚社長が毎年それぞれの職人に支払った金額を紙に書いて渡し、これで確定申告しろと言ってますよ」
(調査官田中)
朝川税理士の言い方は説得力があるな・・・
でもほんとに確定申告してるんだろうか?
統括へ、うかつな報告はできないし、
調べて申告してたら無駄になるしな・・・
どうしよう?
5人分の源泉徴収漏れで3年分で300万円の追徴課税
消費税の課税仕入れ否認3年分で400万円の追徴課税は堅いな
「朝川先生、わかりました一度署に戻って検討してみます」
(朝川税理士)
「5人の申告状況を調べてみたら納得できますよ・・・」
(調査官田中)
悔しいが調査官として力不足を感じた・・・・・
10月1日、本日、統括への報告を終えた。
1・やはり裏を取れと言われた
2・何で大塚社長が職人に支払った金額を紙に書いて渡した物を確認してこな いんだ!
3・職人たちの出面帳、日報、労災保険の加入、等々の確認が甘い!
4・職人達の携帯番号ぐらい聞いて来い
5・君のこれからの調査に対する姿勢はどうなんだ・・・
等々、くどくどと文句のような指導を受けた。
10月15日
結局のところ職人5名の申告を確認できた、
全員がこの3年間は白色申告をしていた。
売上げは拒蜥ヒ塗装店が外注費として支払っている金額のまま計上されてい
た。
経費は何を根拠に計上しているかはわからないが、事業所得として申告が出て
いる以上否認できない。
電話で朝川税理士に今回の税務調査を終了する旨を伝えた
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