9月14日(月)国税局の税務調査が始まった。
富士宮市内にある大手工作機械メーカー富士精機は、2年に一度国税局の税務調査を受けている。
税務調査は会社の小会議室で毎年行なわれる。小会議室といっても小学校の教室くらいの大きさがある、壁にはりっぱな額に入った、たたみ3畳ほどの不可思議な絵が飾ってある。
大きなテーブルの周りに、黒くて大きな重役椅子が20以上ある。
(国税局側)
1. 調査第A部門 統括官1名
2. 主査2名
3. 調査官2名の計5名
(税理士側)
立会いは税理士が4名
1. 申告書に名前を書いているサイン税理士
2. 実際に申告書を作成している働き蜂税理士
3. そして税務調査の時だけ現れるOB顧問の親分税理士
4. そしてその子分税理士
(会社の人間)
1. 総務部の部長
2. 経理課の課長
3. 経理担当2名
4. 女の子2名
まず、それぞれ名刺の交換会が10分ほど行なわれた。まるでビジネスマンの異業種交流会に思える。税務調査の主導権を握っているのは、税務調査の時だけ現れるOB顧問の親分税理士だ。
統括官はそれぞれの部下に指示を出し前方の真ん中の椅子に座った。
主査の一人は会社の総勘定元帳をめくっていく、調査官は請求書等の原始記録を経理課長から出してもらいチェックを行なう。
もう一人の主査は、役員会の議事録の綴りを確認する。
基本的には、国税が会社の人間に資料の提示を求め、ひとつづつ確認し、つぶして行く作業を繰り返して行く。
この場での税理士4名の仕事は何だろう?
申告書に名前を書いているサイン税理士は名刺交換会が終わると帰ってしまった。
実際に申告書を作成している働き蜂税理士は必死に調査記録をメモしている。
そして税務調査の時だけ現れるOB顧問の親分税理士は、国税の側が会社の人間に詰問すると大きな声で、「課長!良識の範囲内ですすめろ!」等と意味不明な言葉を言う。
そしてその子分税理士も便乗して同調するようなもっと抽象的な言葉を発する 。
国税調査3日目 お昼前11:40
OB親分税理士が、調査中の全員を近くの料亭に誘った。
「近くで食事する店を予約してあるから全員で行きましょうか!」
国税局の職員は、断った。しかしOB親分税理士は 「たいした店じゃないし、もう予約して
あるから断れんぞ!」 と強引に連れて行ってしまった。
店の座敷には15名程が座り、昼食の料理を待っていた。
OB親分税理士は、「おかみビール3本」と勝手にビールを注文する。
国税局の職員は正座したまま一言も話しをしない。
OB親分税理士は、統括にビールを強引に注いだ、課長まあいいだろ一杯ぐらい。
統括は進められ断りきれず少しグラスに口をつけた。昼間から税務調査中に飲酒、かなり常識はずれな光景です。
…………………………
調査は一週間ほどで終了した。
今回の調査では大した問題点はなかった、仕掛在庫と、交際費になる経費ぐらい。しかし会社の規模が大きいので金額は5,000万円を超える所得漏れになる。
調査立会いの費用と顧問報酬
この会社には顧問税理士が4名いる。
申告書に名前を書いているサイン税理士と実際に申告書を作成している働き蜂税理士は同じ事務所の所属、月額顧問料は10万円、決算申告料は80万円、今回の調査立会いと修正申告作成料はあわせて50万円
税務調査の時だけ現れるOB顧問の親分税理士は、月額顧問料は8万円、今回の調査立会料は100万円
そしてその子分税理士も2年間だけの契約だが月額顧問料は8万円、今回の調査立会料は
100万円
OB税理士の間での金額の差はない、さすが元公務員、何事も平等に。
しかしOB顧問の親分税理士は、永久に顧問できるのに対し、子分税理士は2年間だけの期間限定だ。
2年に一度税務調査があれば、次の子分税理士も税務調査の恩恵にあやかれると言う不思議な世界です。
|