山田会計事務所だより
ありえない?ゼロクーポン債・外貨建MMFの優遇税制
(平成28年1月1日より国税のメスが入ってしまいました。逃げ道はサラリーマンが確定申告をしなくてもよい範囲までになってしまいました。 不正な課税逃れ問題として、タックスヘイブン(租税回避地)との取引を暴露し世界的に関心が高まっている「パナマ文書」に比べたら可哀相な金額 年間20万円までです。 )
1.外貨預金の税金
利子は利子所得、為替差損益は雑所得になります。外貨預金を考えている人はおおむね高額所得の方が多いと思いますので、為替差益の50%ぐらいの税金がかかる場合もあります。
課税は満期や解約などで実際に発生したときに雑所得として税務署に申告します。
@預けたときよりも円高になった場合
ドル建ての預金に、1ドル=85円のとき、30,000ドルを預けた。利率は年3%、1年満期
満期日に30、900ドルとなり、そのときの為替レートは1ドル=80円だったとします。
為替差損益 = 30,000ドル×(80円−85円)=−150,000円(為替差損) …損した人は気の毒ですが何ら救済はありません
利子額 = (30,900ドル−30,000ドル)×80円=72,000円
源泉徴収額 = 72,000円×20%=14,400円 …損した上に税金まで取られます
A預けたときよりも円安になった場合
ドル建ての預金に、1ドル=85円のとき、30,000ドルを預けた。利率は年3%、1年満期
満期日に30、900ドルとなり、そのときの為替レートは1ドル=95円だったとします。
為替差損益 = 30,000ドル×(95円−85円)=300,000円(為替差益) …雑所得になります
利子額 = (30,900ドル−30,000ドル)×95円=85,500円
源泉徴収額 = 85,500円×20%=17,100円
* **この低金利の時代でもブラジルのレアルや南アフリカのランド建て預金などは年9%以上の利率を出しているものもあります。しかし為替手数料が往復で6%なんていう場合もあり、うまい話ばかりじゃありません。
また国家自体が不安定であり、リスクも大きいはずです。
2.外貨ゼロクーポン債の課税(割引債)
米ドル・ゼロ・クーポン債とは、例えば、「10年後に3万ドル満期」で受け取ることが出来る債券を、今約70%の割引価格(約2万ドル)で購入するというものです。
期間中の利払いは無く、満期日に一括してドルでもらいます。
利払いがない分、満期まで複利で運用され、3万ドルが10年後の償還期限にもらえます。
債券です、アメリカが債務不履行とならない限り、米ドルでの保証は確保されます。(日本の国債より安全かも?)購入価格は、残存期間(預入期間)が長ければ長いほど低くなります。当然為替の変動は大きく影響します。
例えばドル建てのゼロ・クーポン債(10年満期)を、1ドル=80円のとき、30,000ドル(約160万円)を購入。利率は、年約3.5%(証券会社によって違います)
@満期日(10年後)には30,000ドルとなります、そのときの為替レートが1ドル=75円(円高)だったとします。
30,000ドル=約225万円となり、65万円が雑所得として課税されてしまいます(高額所得者の方は30万円の税金)しかし、満期日の直前に売却すれば譲渡所得になり、ひとり年間50万円までは無税です。
Aまた満期日(10年後)の為替レートが1ドル=95円(円安)だった場合には、
30,000ドル=約285万円となり、125万円が雑所得として課税されてしまいます(高額所得者の方は60万円の税金)
しかし、満期日の直前に売却すれば譲渡所得になり、ひとり年間50万円までは無税です。
この場合でも、うまく2年に分けて売却すれば不思議なことにNO!TAXです。(今の日本の税法では…)
@平成25年度税制改正により、平成28年1月1日以後に発行される割引債の償還差益については、償還時に、税率15.315%(他に地方税5%)の源泉徴収の上、公社債の譲渡所得等に係る収入金額とみなして、税率15%(他に地方税5%)の申告分離課税の対象とされます。
A課税の逃げ道として、「給与所得の収入金額から、雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円以下の人は、申告の必要はありません。」を利用。
B1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円以下にする。
C2か所以上から給与の支払を受けている人で、主たる給与以外の給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円以下にする。
D給与の年間収入金額が2,000万円を超える人 は確定申告が必要なので、利益が20万円以下でも確定申告が必要です。
Eつまり、一般のサラリーマンが20万円以下の利益になるように調整してゼロクーポン債等で儲けた場合に税金がかからないだけになってしまった。
3.ゼロクーポン債とは
難しく言うと、ゼロクーポン債とは、国外で割引の方法によって発行される公社債のことです。表面利率がないことから、ゼロクーポン債と呼ばれています。
ゼロクーポン債を満期まで持っていて受け取る償還差益は、雑所得として総合課税の対象になります。
また、満期になる前に中途で売却したときの所得は、通常、譲渡所得として総合課税の対象になります。ただし、ゼロクーポン債の中途売却による所得でも、売る人が有価証券の継続的取引を行っているような場合には、事業所得又は雑所得になることもあります。
なお、ゼロクーポン債に似ている次の公社債を満期になる前に国内で売却したときの所得も、ゼロクーポン債と同じ取扱いになります。
(1) 低クーポン債
低クーポン債とは、原則として、利率が0.5%未満のものをいいます。
なお、この利率は、この公社債の発行時期、償還期限により異なります。
(2) ストリップス債
ストリップス債とは、その債権が元本の部分と利子の部分とに切り離してそれぞれ取引されるものをいいます。
(3) デファードペイメント債
デファードペイメント債とは、利子の計算期間が1年を超えるものなどをいいます。
(4) 利子の利率のうち最も高いものを最も低いもので除して計算した割合が100分の150以上であるもの(利子を付さない期間があるものを含みます。)。
ゼロクーポン債は債券です。金利変動により売買価格は毎日変動します。長期運用を考えて購入すべきだと思います。
購入価格に手数料は含まれています。日本に市場がありませんので、証券会社が勝手にに売買価格を設定します。
4.ゼロクーポン債の値段は証券会社によって違います
不思議なことに野村證券よりも大和證券のほうがお買い得です。
なんかあったとき(証券会社がつぶれたとき)のリスクも加味されてると思います…
三菱UFJ証券は店頭管理でもネット管理でも維持管理料などは発生しません。
野村証券はネットでは年間の維持管理料は発生しません。
大和證券は維持管理費がかかります。
証券会社がつぶれても預かり債権なので保証されているようです。しかし発行している国や団体が破綻すると当然日本の株式会社の株券と同様(JAL・ライブドアなど)に紙くずになります。
証券会社が倒産したときは、一旦売却になってしまうのでしょうか?すると譲渡所得が確定してしまいます。同額を別の証券会社で購入したらバカみたいですね。
投資にはリスクはつきもの、分散投資でリスクも分散したいところです。
5.ゼロクーポン債を個人年金の様に利用する方法
例えば)
現在55歳の人が、800万円の現金をもっていたとします。特にいい運用先が解らず、定期預金に入れていたとすると当分は、ほとんど金利は期待できないと思います。
そこで、この800万円で下記の(NO、1から15の)ゼロクーポン債を購入し5年後の60才から毎年10,000ドルを年金代わりに受け取ることにします。
NO、1の 4年9カ月後 に満期が来るものは、満期時に10,000ドル(そのときの為替が1ドル83円とすると)830,000円を受け取ることが出来ます。
つまり 761,771円で購入したアメリカ国債(ゼロクーポン)が830,000円になり、直前に解約すれば譲渡所得となり税金はかかりません。
830,000円から761,771円を引いた68,229円が利益となります。
利回りは 1.91%です利子所得ですと20%源泉所得税がかかりますが譲渡所得なら源泉はかからず、利子所得なら利回りは 2.4%程になり大変有利です。
同様に、NO、2以降15年間年金代わりで10,000ドルを受け取ることが出来ます。
ただし、受取時の為替が円安か?円高か?によって受取額に大きな違いが出ることになりますが。
<平成23年4月15日現在 (為替は1ドル83円)として計算>
通貨 |
銘柄 |
満期日
|
満期までの 年月数
|
1万ドルあたりの購入単価 (ドル)
|
利回り (%)
|
1万ドルを日本円で購入する場合の金額(円) |
米ドル
|
アメリカ国債(ゼロクーポン)
|
2016/02/15
|
4年9カ月
|
9123 |
1.91
|
761771 円 |
米ドル
|
アメリカ国債(ゼロクーポン)
|
2017/05/15
|
6年
|
8620
|
2.46
|
719770 円 |
米ドル
|
アメリカ国債(ゼロクーポン)
|
2018/05/15
|
7年
|
8238
|
2.76
|
687873 円 |
米ドル
|
アメリカ国債(ゼロクーポン)
|
2019/02/15
|
7年9カ月
|
7931
|
2.98
|
662239 円 |
米ドル |
アメリカ国債(ゼロクーポン) |
2020/02/15 |
8年9カ月 |
7528 |
3.24
|
628588 円 |
米ドル |
アメリカ国債(ゼロクーポン) |
2021/02/15 |
9年9カ月 |
7110
|
3.50
|
593685 円 |
米ドル |
アメリカ国債(ゼロクーポン) |
2022/08/15 |
11年3カ月 |
6524
|
3.80
|
544754 円 |
米ドル
|
アメリカ国債(ゼロクーポン)
|
2023/02/15
|
11年9カ月
|
6335
|
3.89
|
528973 円 |
米ドル
|
アメリカ国債(ゼロクーポン)
|
2024/11/15
|
13年6カ月
|
5751
|
4.11
|
480209 円 |
米ドル
|
アメリカ国債(ゼロクーポン)
|
2025/02/15
|
13年9カ月
|
5672
|
4.14
|
473612 円 |
米ドル
|
アメリカ国債(ゼロクーポン)
|
2026/02/15
|
14年9カ月
|
5365
|
4.24
|
447978 円 |
米ドル
|
アメリカ国債(ゼロクーポン)
|
2027/02/15
|
15年9カ月
|
5082
|
4.32
|
424347 円 |
米ドル
|
アメリカ国債(ゼロクーポン)
|
2028/08/15
|
17年3カ月
|
4075
|
4.40
|
392868 円 |
米ドル
|
アメリカ国債(ゼロクーポン)
|
2029/08/15
|
18年3カ月
|
4476
|
4.43
|
373746 円 |
米ドル
|
アメリカ国債(ゼロクーポン)
|
2031/02/15
|
19年9カ月
|
4170
|
4.46
|
348195 円 |
合 計 |
8068605 円 |
6.外貨建MMFの優遇税制
外貨建MMFを買って、その後売却した場合の譲渡したことによる所得については非課税となっています(租税特別措置法第37条の15第1項第2号)。
外貨建てMMFは全て非課税でしょうか?
たとえば野村證券で日本円によって外貨建てMMF(豪ドル)を100万円買ったとします。分配金が10.000円ついた場合、手取額は7.968円になります。
この場合にまず分配金(利息のようなもの)には課税されます。平成25年1月1日より税率は20.315%です、内訳は所得税が(国税15.315%)都道府県民税が(地方税5.00%)です。これは源泉分離課税のため申告は不要です。
その後、為替(豪ドル)が、例えば1豪ドル95円から105円になったとします。100万円で買った外貨建てMMF(豪ドル)は、110万円ぐらいで売ることが出来ます。
通常の外貨預金なら、この儲け分10万円が雑所得として総合課税されます。外貨預金やをするような人は、所得の高い人が多いと思いますので30%から50%の税金がかかってしまいます。また確定申告も必要です。年間20万円未満なら国税の確定申告不要という規定もありますが、住民税の申告は必要です。
しかし外貨建MMFの場合には、為替差益に対して課税されません。
為替差益とは、上の例で10万円の儲けのことです。
公社債投資信託の譲渡益は、日本では非課税となっています。この外貨建MMFは公社債投資信託とされているため課税されません。
外貨MMFという商品のは投資対象が公社債なので円で公社債を買って、その公社債を円にで受け取るという外貨MMFには為替差益が出ても税金はかからないという屁理屈になっています。
7.外貨MMFの為替差益が課税される場合
先ほどの例の様に、証券会社等で日本円によって1豪ドル90円のときに外貨建てMMF(豪ドル)を100万円買ったとします。その後1豪ドルが90円から105円と高くなった時点で、外貨建てMMFを解約し豪ドルで受け取って他の投資を考えたとします。
その後、1豪ドルが110円になったので豪ドルを円に換えました。20万円ほどの儲けが出ましたが、為替差益として雑所得の扱いを受けます。このため確定申告が必要になり、さい3万円から10万円の納税が出てしまいます。
円→外貨MMF→円 の場合は非課税
円→外貨MMF→外貨→円 の場合は課税になります
お気をつけください。